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逆流性食道炎

目次

逆流性食道炎

胃酸を含む胃の内容物が食道〜のどに逆流することで,食道粘膜に刺激症状や炎症を起こすのが逆流性食道炎です.
食道下部(胃の入り口)を締める括約筋がゆるくなると胃液が逆流しやすくなり,逆流した胃液を胃に押し戻す蠕動運動がうまく働かなくなると,食道粘膜が炎症を起こして逆流性食道炎になります.

主な症状には,胸焼け,ゲップ,呑酸(酸味や苦味のあるものが上がってくる),みぞおちの痛み,喉のつかえ感,咳痰がらみ,声枯れなどがあります.

逆流性食道炎は近年患者数が増加していますが,これには高齢化や食の欧米化が大きく関わっていると考えられています.薬物療法により比較的短期間で症状を改善できますが生活習慣によって再発を繰り返しやすく,食道の炎症が長期間続くと食道がんのリスクが上昇します.
消化器内科を受診してしっかり治し,再発を防ぐようにしましょう.

逆流性食道炎の症状

症状としては胸焼けが最も多く,みぞおちや胸のあたりが熱くなる・焼け付くような感じを自覚することが多いです.喉が詰まる感じや,風邪を引いていないのに咳・痰がらみや声枯れなどが現れることもありますが,中にはほとんど症状のないこともあります.

◆胸焼け
◆げっぷ
◆呑酸(胃酸や苦い胃液が上がる)

◆胸の痛み,みぞおちの痛み
◆胃もたれ
◆食道の詰まり感

◆声がれ
◆のどの痛みや違和感
◆咳・痰がらみ

など

逆流性食道炎の原因

下部食道括約筋(LES)

食道下端と胃の間にある筋肉で,収縮することで胃液の逆流を防いでいるのが下部食道括約筋です.加齢などで筋肉が衰えるとこの下部食道括約筋の力も弱くなって,逆流が起こりやすくなります.

食道裂孔ヘルニア

胸部と腹部を隔てている横隔膜には,食道が通る食道裂孔があります.
この孔が加齢などでゆるむと,胃の上部が胸側にはみ出してしまう食道裂孔ヘルニアになり,裂孔(それ自体が筋肉でできていますが)が締め付ける力が及ばなくなるため,胃液が逆流しやすくなります.

腹圧上昇

腹圧が強くなると胃にも圧力がかかって,胃液が逆流しやすくなります.
食べ過ぎや肥満,妊娠,ベルトや帯,コルセットなどによる腹部の締め付け,猫背や前かがみなどの姿勢でも腹圧が上がりますので注意が必要です.

消化管排出能の低下

胃の運動能力が低下する,あるいは幽門(胃の出口)が潰瘍やがんなどで変形して狭くなると,胃内の圧力が高くなって逆流を起こすことがあります.また胃炎や潰瘍,ポリープ,胃がん,胃切除後(手術)による運動機能低下などが原因で逆流が起こっている場合もあります.膠原病などによって食道や胃の蠕動運動に異常が起こり,その結果,逆流性食道炎を発症することもあります.

逆流性食道炎の検査

造影剤を用いたX線検査では食道下部の状態を十分に確認できません.
逆流性食道炎の診断には,胃カメラ検査で食道粘膜を直接観察し,色調変化などを詳細に調べる必要があります.
一般的な逆流性食道炎は食道粘膜に炎症や傷が認められますが,非びらん性胃食道逆流症(NERD)の場合には粘膜の炎症や傷はほとんどありません.そのような場合には症状や経過などから適切に診断します.胃酸の逆流を確認するために入院して食道内の24時間pH測定検査を行うこともあります.

逆流性食道炎の治療

逆流性食道炎の治療では,胃酸分泌を抑える薬物療法と生活習慣改善が行われます.
症状自体は薬物療法で比較的短期間に改善が見込めますが,再発させないためには生活習慣の改善は不可欠です.

薬物療法

胃酸分泌をコントロールすることで炎症を抑えます。蠕動運動に問題がある場合にはそれを改善する薬を使います。炎症の状態によって粘膜保護剤を用いる場合もあります。症状が治まっても炎症が改善したと医師が判断するまで、薬の服用をしっかり続けることが重要です。
また、胃などの病変によって逆流性食道炎が起こっている場合には、その治療も行っていきます。

【胃酸分泌抑制薬】
胃酸の分泌を抑え,食道に逆流する胃酸を減らします.
P-CABPPIH2ブロッカーの3種類があります.

【消化管運動機能改善薬】
食道の動き(蠕動)を回復して逆流した胃酸を胃に押し戻す働きと,胃の運動を改善して胃液を十二指腸に排出する働きがあります

【粘膜保護薬】
食道粘膜の傷を保護することで胃酸による傷害を防ぎます.

【制酸薬(胃酸中和薬)】
胃酸を中和する働きがあります.即効性がありますが効果の持続も短いです.

生活習慣改善

他に適度な運動を行うことも、腹圧上昇の原因になる肥満や便秘の解消に役立ちます。

【食事と嗜好品の注意】
・食事は一度に食べすぎず,ゆっくり食べるようにしましょう.
・低脂肪食を心がけましょう.
・香辛料や甘いもの,柑橘類は控えましょう
・飲酒や喫煙はできるだけやめましょう
・便秘にならないよう水分と食物線維をしっかり摂りましょう

【姿勢の注意】
・前かがみにならないようにしましょう
・食事の後,2時間以上は横にならないようにしましょう
・就寝時は上半身を少し高くして寝るようにしましょう
・身体の右側を下にして寝るのは避けましょう

【腹圧への注意】
・ベルトや帯,コルセットなどでお腹を締め付けないようにしましょう
・太り気味の人は体重を減らしましょう

手術による治療

生活習慣を改善し,薬物療法を行っても症状が改善しない場合は手術を行うこともあります.
以前は開腹手術が中心でしたが,最近は腹腔鏡を用いた手術が普及しています.腹腔鏡手術は入院期間が短く退院後すぐに普通の生活に戻ることが可能で,腹部に残る傷跡も小さいという特徴があります.

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